STSを学べる大学(アメリカ)

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アメリカでの主要大学

アメリカのSTSの教育機関の類型

  1. エリート教育型で分散的なもの(必ずしもSTSの研究に焦点はない)
  2. 一般教育型(学部の一般教育を担当しSTS教育はminor中心)
  3. 研究者養成型(独立学部として確立し大学院が充実)
※このアメリカの大学の紹介は2000年度の科研費研究「科学と社会」の報告に基づいて作成しました。

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Georgia Institute of Technology

School of History, Technology and Society

URL:
http://www.hts.gatech.edu/

School of Public Policy

URL: http://www.cherry.gatech.edu/
 1988年、社会科学と歴史分野の学部教育を担当していたSchool of Social Sciencesを新学長のイニシアティブで3分し、School of History, Technology and Society、School of International Affairs(正式名称はThe Sam Nunn School of International Affairs)、School of Public Policyを設置したもの。したがって、工学系大学の社会科学系(及び歴史学)一般教育の性格が強いといえる。事実、社会科学系分野の一般教育を担当しており、学科のあるD. M. Smithビルディングには、さまざまな学生が講義を聴きに来ていた。MITのSTSのように、STSの学位をとれるようなコースにはせず、History of Technology, Public Policy, Information Technologyの学位をとれる形にした。つまり、STS関連の講義はあるが、STSそのもののschoolではない。学部レベルのethics教育も担当している。School of History, Technology and Societyは、一般的な歴史学や社会学が中心である。科学技術に関心のあるスタッフは10人程度。School of Public Policyは、政治学、経済学、社会学、都市計画、科学技術政策などと多様なスタッフを抱えており、全体的にはこちらの方が、科学技術に対する関心が強い。
 Engineering Ethicsについて質問したところ、教育は近年重要になってきているという。やはりABETの影響が大きい。School of History, Technology and Society、School of International Affairs、School of Public Policyのスタッフが工学部で、Ethics for Technical Professions、Ethical Theories、Science, Technology, and Human ValuesなどのEngineering Ethics教育科目を開設しているほか、School of History, Technology and Society、School of International Affairs、School of Public Policyの科目の一部を関連科目として認定している。ACMで必須科目として要請されているEthics in Information Technologyをコンピュータ学部で開設している(D. G. Johnsonなどが担当)。研究倫理については、明示的には取り上げていないが、大学院教育の中で扱っている。なお、NSFの資金援助で研究倫理に関するmulti-universityのprojectが行われており、そこに参加している。最近、School of Public Policyでは、Bio-ethics関係の専門家(法律)を採用したとのことだった。

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University of Pennsylvania

Dept. of History & Sociology of Science

URL:
http://ccat.sas.upenn.edu/hss/
 STSとは名乗っていないが、実質的にはSTSと関連が深い大学院・研究中心の学部である。英国出身の化学史家Arnold Thackrayが、History and Sociology of Scienceを独立の学部として設立するように大学経営者を説得して1974年に設立した。人類学、社会学、科学史など広い分野からスタッフを選んだ。この中には、人類学のLoren Eiseleyもいた。1985年頃にArnold Thackrayが呼び掛けてChemical Heritage Foundationをフィラデルフィア市内に設立。大手製薬会社などが出資した巨大な財団であり、これが研究資金の重要な財源となった。現在、大学を退職したArnold Thackrayが財団理事長を務めている。
 Dept. of History & Sociology of Scienceは学際的だが、歴史が強いことに特色がある。大学そのものが学際教育研究指向で、学部やschoolを越えた協力が一般的。そのような中で、医学部と協力して医療人類学の研究なども生まれた。Bio-ethicsについては、別に医学部にセンターがある。最近は、Bio-ethicsがのびている。Feiermanはアフリカの文化人類学が専門で、医学部との共同研究をしているという。
 学生数は学部majorが70人、minorが2人である。学部学生の約25%は医学部に進学する。大学院生は23人。学生側のイニシアチブが強く、informal reading groupをさかんに作るなどしている。それが正式のコース(科目)に位置付けられた例もある。大学院生のサポートとしては、大学が4-5年の奨学金をMulti-year Packageとして用意している。学費分と生活費分を提供。形式的にはTAなどの義務があるとはいうものの、実際には何もしなくてよい場合がほとんど。これ以外にNSFのfellowshipが、History of Scienceの分野で毎年3人くらいいる。これは他大学と比べて多い方である。また、Chemical Heritage Foundationの研究費からRAの形で支援がある。
 大学院生の評価を知るために、二人の現役院生にインタビューすることができた。Cho(韓国系アメリカ人)は、MITの生物学出身で、Sivinを慕ってUniversity of Pennsylvaniaへ来たという。つきたい先生がいるから他大学から進学してくるという学生が多い。他大学と比べるとカリキュラムがシステマティックだという。今後約5人のスタッフが退職するので、これから変化が始まるのではないか。Margaret JacobはすでにUCLAに移り、Thomas Hughesは引退した。最近はアメリカをテーマとするスタッフが増え、ヨーロッパについては学びにくくなってきた。MITのSTSは大学の周辺に追いやられた感じで、majorでSTSをとるものではないという雰囲気がある。それに比べると、ここではHistory & Sociology of Scienceは尊重されている。もっとも、University of Pennsylvaniaでは語学の修得が困難である点が問題。そのような基礎的な能力の修得は大学院の単位にならないが、中間試験では必須である。Carpentersは化学出身で、現在医学史をやっている。科学の人類学を学べる数少ない大学の一つであると思うという。

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Lehigh University

Science, Technology and Society Program

URL:
http://www.lehigh.edu/~incat/section5/sts.html
 学部レベルの一般教育的性格のSTSプログラムで、専任スタッフはおらず、多数の学部の協力で運営されている。学部ではminorとして選択される場合がほとんどで、大学院もminorのみ。しかし、Georgia Techよりはるかにしっかりしているように見受けられた。
 1972年に外部助成(NSFの人文社会学版のようなもの)により創設され、技術系学部生の人文系教育を目指した。1975年頃にminorになり、90年にmajorを開始した。programであって、独自スタッフはおらず、directorをおいている。
 現在のScience, Technology and Society Programでは、多くの科目はそれぞれの学部の科目として開設し、一部の共通的科目を独自に開設している。1年生向けの入門科目、4年の講読、途中の各論などが独自科目。1年生向けの入門科目は、ABETの関係で、工学部の学生も受講するケースがある。各学部で関連科目を開講してくれるのはよいが、programの一存で科目を開設できないという難点があり、directorとしては難しいところである。スタッフの点では、技術史が強いが、社会学が弱い。日本の産業技術史をやっているスタッフもいる。大学院については、数年前にminorとしてSTSをスタートした。多くの場合、形式的にはhistoryをmajorとして実質的にSTSの学位をとっている。Ph D. History of Technologyで7-8人。米国でSTSの位をとれるのは、MIT、Cornell、Rensselaer、Virginia Tech。これらが4大STS大学院である。学部学生数については、majorで毎年3-4人程度だか、科目の受講生は多くの場合、25-50人くらい。
 研究資金については、個人研究中心で、外部資金は少ない。一部は、NSFの小規模資金で、品質管理、science communicationなどをやっている。また、外部のprojectのメンバーになっている者もいる。
 Ethics教育では、哲学学部でBio-ethicsを開講しているはず。応用倫理の科目はあるが、弱い。工学部では、それぞれの専政が科目の中で倫理を扱っている。また、情報教育では倫理担当の人がいて、Computer and Societyを担当している。Science, Technology and Society Programの入門科目(STS12)でも倫理を扱っている。研究倫理は、それぞれの「研究方法論」のような科目の中でやっている。

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Pennsylvania State University

Science, Technology, and Society Program

URL:
http://www.engr.psu.edu/sts/
 工学部向けの学部レベルの一般教育的性格を持つSTSプログラム(College of Engineeringの中のprogram)でminorのみ。独自の大学院はないが、Interdisciplinary Studies Major in STSとして学位がとれる。大学院には現在6人在籍。1960年代に学生の働きかけでできたもので、歴史は古い。
 さまざまな学部のスタッフが協力して運営。STS programのスタッフに数えられるのは全体で約40名だが、アクティブなスタッフは20名くらい。Ass. Prof.がたくさんいるが、Teaching Fellow(TA)のような感じで、コーネルやレンセラーから来て、数年で異動してしまう。新しいプログラム長のDevonの見解では、スタッフによってSTSのモデル、アプローチが違っている。新しいアプローチが必要ではないか。現実とのつながりが欠けている。
 Penn Stateで最初のchairmanであったRoyに、Penn Stateおよび米国におけるSTSの略史を聞いてみた。アメリカでは戦前にマートンがSTSと言ったが、当時は何も起きなかった。1960年代の公民権運動などを背景として、学生たちが「狭い専門知識だけでなく、理工学の社会的意義などを学びたい」と希望したところから、STSが求められ、Penn Stateでは工学系のスタッフのイニシアティブでSTSを開始した。このときは、Roy自身が工学部のChairmanや評議会に開設を訴えた。なお、Cornell、SUNYなどでも工学系スタッフが主導してSTSprogramを開設した。Penn Stateでは1969年にスタートした。大学で公式に認められたprogramとしては米国でも一番早いものの一つ。理学、工学、人文、社会のシニア・スタッフが参集した学際的なprogramであった。すべての学生に1科目以上履修することを義務づけた。米国のSTS programの第一世代は大規模有名大学でスタートし、学部の一般教育的色彩が強かった。その後小規模大学にも広まって行った(第二世代)。1978,9年頃になると、pre-collegeのSTSが草の根的に始まった。80年代初めにはすべての高等学校でSTSを教えるべきだとの運動が始まった。1980年代初めには、Rensselaer、MIT、フロリダ、アリゾナなどでSTS programが始まり、大学院も開始された。Department方式は3、4しかなく、多くはprogramである。1985年にPenn StateのSTS programは、journalとmeetingを始める(NASTSの創設)。1985年にPenn StateのSTSprogramは工学部の下へ移った。ポストも1つ用意され(実際には5ポスト希望していた)、Carl Mitchamを採用した。Program Chairman制からProgram Director制へ移行した。Royの判断では、1985年ごろがPenn StateのSTS programのピークであった。その後はただprogramがあるだけで官僚的になってしまった。原因は、初期のシニア・メンバーが退職し、directorの適任者がいなかったこと、若手を引き付けることができなかったことだ。若手教官は昇進だけを考えて、STSに関心を寄せなかった。Carl Mitchamがdirectorをやったが、マネジメント能力がなかった。また、80年代末には、ラトゥール、ピンチなどの著作が登場し、反科学的傾向が生じた。NSFの担当者はSTSを反科学とみなして、fundingが出にくくなった。もっとも、ラトゥール、ピンチらの著作は、マニュフェストであり、最近のScience Warsとは、中味も人脈も別である。

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NSF

Division of Social and Economic Sciences, Directorate for Social Behavior and Economic Sciences

URL:
http://www.nsf.gov/sbe/ses/sts/
 米国では、1960-70年代にかけて、科学技術系の大学で学生のイニシアチブチによってSTSが始まった。これは、学生たちが、科学技術の社会的コンテクストを知りたいと考えたことによる。とくに、工学系の学生たちが熱心だった。狭い専門分野の教育だけでなく、広く学びたいと考えた。学際的なプログラムができたが、既存の分野(科学史、科学哲学、社会学等)の影響を受けていた。
 米国では1950年代に科学史、科学哲学のプログラムがスタートしていた。技術史は60年代に始まった。その後、Social Studies of Scienceや人類学的研究が始まった。Science, Engineering and Public Policy(数量的研究)については、米国ではSTSと別の系譜になっているが、欧州では一緒になる傾向にある。米国ではSTSの契機として学生がリードしたのに対して、欧州ではエリート・サイエンティストがリードした。その後、STSのResearch Training(大学院教育)を始めたが、就職は容易ではなかった。NSFは1990年代前半に、期間3-5年のSTSプログラム向けファンディングをUCSD、Cornell University、Minnesota Universityに対して行った。これがSTSプログラム向けファンディングの最初。
米国のSTSプログラムは多様である。MITは、グループに分かれていて統一性に欠ける感じがする。それに対して、Cornell Universityは、さまざまな分野を統合している(外から見ると、科学史、科学哲学を中心にSTSに発展した印象。NSFのファンディングの影響が大きかった)。STSのミッションは何かが問われている。教育中心なのか、STSの再生産(後継者養成、大学院中心、研究重視、論文・・・)重視か。現在の助成先は、大学院関連ではノース・キャロライナ州立大学(科学技術倫理)、HarvardのJasanoff(科学技術と法律)、アリゾナ(情報時代の大学)。これらは、STSの大学院プログラムというわけではなく、大学院レベルのminorとして教育をすることを狙っている。
NSFのSTS関係のファンディングは、20世紀の科学・技術史に偏っているとの批判もある。米国の科学技術に関する倫理の教育、研究に対する助成は1970-72年ころから開始。76年には独立のプログラムになった。米国の科学技術に関する倫理の教育、研究の発展においては、オフィサーのHollanderさんが根気強く助成し続けてきたことが重要な役割を果たしてきた。NSFは学際性を一層重視するようになってきている。環境、倫理、ITなど。大学院における学際的な教育科目の開発のための助成をIGERTという枠組みで行っている。
NSFの助成のうち、少なくとも(3.5+2.7)百万ドルがSTS向けである。プログラムディレクターは、ずっとNSFにいる人と、大学から1-3年来てまた戻るrotatorという人がいる。

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Cornell University

Dept. of Science & Technology Studies

URL:
http://biosoc.sts.cornell.edu/
 研究者養成が盛んな、米国における有力STS学部の一つ。学部教育では二つのmajorだが、大学院はひとつになる。本格的大学院としては米国でも最も古いものに数えられる。
 1969年にスタートしたScience, Technology and Society(ST&S)プログラムと、80年代初頭にスタートしたHistory & Philosophy of Scienceプログラムを1992年に統合して、College of Arts and Sciences内の学部組織にした。学部組織だが、独自スタッフは少ない。学部創設時に、NSFのtraining grantをもらい発展した。テーマは「ライフ・サイエンスの発展」で、1-2百万ドルの5年間の助成だった。このgrantは、大学院生の奨学金、workshopなどの経費である。  1969年にスタートした、Science, Technology and Society(ST&S)のプログラムは、エリート科学者が中心になって実施したもので、環境問題、軍事研究などについて扱った。80年代初頭にHistory, Philosophy of Scienceのプログラムがスタートしたが、これはアカデミック指向のものだった。2つのプログラムを統合して、College of Arts and Sciencesの中に、Dept. of Science & Technology Studiesを創設した。これは、大学の多数のプログラムを整理統合した際の一環として行われたものである。一方、当時Sheila Jasanoff(現在Harvard大学)も内部で統合の準備を進めていた。これは、当時STSの博士も生まれ、また当初のメンバーの退職時期だったためである。なお、現在の長のPinchは統合の直前にJasanoffによって採用された。Pinchによると、programよりdepartmentの方がずっとよい。UDCDは、プログラムのままだったので失敗した。
 学部は、Science & Technology Studies、Biology & Societyの2つのmajorがある。このうち、Biology & Societyのmajorは、1969年から存在していた。Science & Technology Studiesは、91年の統合時からスタート。なお、大学院は学部と違って1つである。現在は、25人の大学院生がいる。大学院ではacademic training中心。ほとんどの学生は学位をとるが、修士で終わる者もいる。就職先としては、科学史、ビジネス・スクールなど。博物館、科学ジャーナリストもいる。学部のBiology & Societyのmajorの卒業生の半分以上は医学部進学する。最近10年間で、学生(大学院生)の質が向上した。入学の時点で成績がいいし、学生が積極的にgrantをとる。学生は熱心であり、学生主催でreading seminarを毎週月曜日のランチタイムにやっている(学生が交替でレポート)。
今年度から、GenomeのworkshopがNSFの助成で開始された(当日がその初日であったので、初回の研究会に出席させてもらった)。
現在は、物理学部と同じ建物の中にいるが、手狭なので近々移動し、関係者が一ケ所に集まる見込み。科学史の国際雑誌であるISISの編集部は、今はキャンパス内で離れているが、一緒になる予定。
 抱えている問題点として、多くのスタッフは他のdepartmentとのjoint appointmentなので、後任人事でSTS関連の人材が採用されるとは限らず、人材の確保の面で不安定であることが挙げられる。哲学学部は分析哲学中心で、連携がとれないのが困る。なお、Dept. of Science & Technology Studies独自のポストもあり、これについてはCollege of Arts and Sciencesが人件費、スペース、基本費用の確保に責任を持ってくれる。物理学部と一緒の建物にいて、日常的に交流していることもあり、学内でScience Warsの影響はない。自分の電話番号はScience Warsで一時電話帳に載せられなかったが、今は大丈夫である。社会的にもこれは収まってきている。
研究テーマに関しては、より現代へ、科学よりも技術へと中心が移ってきている。社会学が強い。Jasanoffの影響で政策も強かったが、今は弱くなってきている。自分は今、シンセサイザーの歴史を研究している。
 倫理教育に関連しては、現在、新しいポストで、ITのSTS(倫理を含む)の人材を採用する予定である。自分たちのところのKlineが、ABET対応の技術者倫理を担当している。研究倫理は弱い。生命倫理は250人が受講し、事例中心のアプローチでやっている。ただし、倫理は広い意味で捉えている。

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Harvard University

John F. Kennedy School of Government

URL:
http://www.ksg.harvard.edu/

Department of History of Science

URL: http://www.fas.harvard.edu/~hsdept/
 Harvard大学には科学史学部など、STSに関連する学部、プログラムなどは多数あるが、独立の組織になっていない。そこで、前記CornellのDept. of Science & Technology Studiesを立ち上げたJasanoffと、新進の科学史家であるGalisonに半公式に面会した。
 John F. Kennedy School of Governmentは、1960年代にpublic policyの小規模なprogramとしてスタートした(1969年にMaster in Public Policy Programを開始)。その後、1936年から継続していたMaster in Public Administration Program (MPA)、Kennedy大統領を記念して設立されたInstitute of Politics (IOP)と統合して、1978年にJohn F. Kennedy School of Governmentを設立した。Schoolは、自治的なユニットでポストがあり、deanがいる。Kennedy Schoolはprofessional schoolなのでdepartmentはない。Senior faculty(テニュアのこと)は約40名。Kennedy Schoolには多数(10)のセンターがある。センターにおけるスタッフのつながりはルースで、研究テーマは一人一人異なっている。Jasanoffが所属するのは、Belfer Center for Science and International Affairs (BCSIA)で、軍備管理(arms control)の専門家が多い。Science, Technology and Public Policyを研究するスタッフについては、formalでhigh-level、連邦政府指向が強い。
 Jasanoffのここでの活動について尋ねたところ、Science and Civil Societyの問題全般を対象としているという。例えば、なぜBio-ethicsが突然出現したのか、といった問題について研究している。Science and Democracy、Public Understanding Scienceなどにも関心がある。一般的には、Science, Technology and Public Policyの専門家はこのような問題を扱わない。Kennedy Schoolが本務だが、History of Science、School of Public Health、 Undergraduate Concentration in Environmental Science and Public Policy(concentrationとはcoreのこと)の担当でもある。 Environmental Science and Public Policyは基本的にはFaculty of Arts and Sciences (FAS)の提供するconcentrationだが、他の組織のスタッフが参加。Jasanoffはここで年間3コース(科目)を教えている。Kennedy Schoolの大学院では、Science, Power and Politicsを担当している。これは、セミナー形式の科目であり、いろいろとテーマを変えながら実施している。これまでのテーマとしては、clinical perspective for policy analysis、law and life scienceなどがある。Kennedy Schoolは、個々人の研究内容等について細かいことはいわない。
ここでは、Ph D programの中にSTSのトラックを作りたいと考えている。departmentは難しいだろう。STS programは、関心を持つスタッフがいないので困難である。また、現在NSFのtraining grantを受領しているが、30万ドルと小規模なのでprogramを作るには不十分である。
 前任校であったCornell UniversityのDep. STSについても質問した。Jasanoffは1978年から98年までCornell大学に所属していた。1978年当時、すでにSTS programにはdirector(政治学、土木工学などのスタッフが担当)がいた。ただし、STS独自のポストはなかった。1988年にSTSのポストが用意され、JasanoffがSTSのポストのdirectorに就任した。STSのポストができたことでprogramが安定した。安定のためには、permanent faculty line in STSがあることが大切である。
 Galisonについては、夕食時の歓談ということで、詳細は聞き取りができなかったが、予想通り視野は科学史に限定されていた。ただ、科学史をSTSの下位分野と位置づけており、最近の人類学との連携も強調していた点が印象的であった。

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MIT

Program in Science, Technology, and Society, School of Humanities, Arts and Social Sciences

URL:
http://web.mit.edu/sts/
 工学系大学における一般教育としての性格と、研究者養成機能を合わせ持っている。歴史もあり、米国におけるSTS有力大学の一つ。学際的。名前はプログラムだが、departmentとほぼ同格で人事権を持っている。
 1970年から80年にかけて学長だったJerome WeisaserはSTSのcollegeを創設しようと考えた。シカゴのマッカーサー財団がそのための資金を提供してくれることになっていたが、関係者の死亡のため資金が手当てできなくなり、program(本当の意味での)としてスタートした。1982年から85年の時期がもっとも困難な時期だった。これは、資金がなかったこと、programであったので、スタッフは他のdepartmentとのjoint appointmentであり専任でなかったためである。83年前後には、STSのprogramを閉鎖するという議論も出た。いろいろ検討した結果、当時のSchool of Humanities, Arts and Social Sciencesのdeanに対して、閉鎖ではなく、逆にPh D programを創設するように訴えた。これは、MITは研究大学であり、各分野にとって大学院が存在していることが決定的に重要であるということによる。3年間交渉し続けた結果、1988年にはPhD programを創設し、現在のようなdepartment的性格の組織になった。その結果、教員も学生も増え、よい状況になった。学生の士気も高い。教員の多くは、歴史家である。競争相手は、Harvard(科学史の分野で)、Cornell、Rensselaer Polytechnic Institute(STSの分野で)であろう。
 現在、学部のmajorは0-2名程度。多くはconcentration(minorのようなもの)として受講している。大学院は毎年4-5名入学、全体で25-30人程度在籍。これまでにPhDは17人、ほぼ全員大学に就職している。
 課題としては、大学院生へのfunding(学生募集に影響あり)、スペースの不足(1981年に現在の建物に移ったまま)、人類学のスタッフを採用すること、などがある。
倫理教育について質問した。ABET2000の導入に伴い、工学部生は人文・社会科学分野の学習に全体の20-25%を宛てなければならなくなった。また技術者倫理が必修になったので、工学系学部とSTSの共同で技術者倫理に関する科目を多数用意している。
 インタビューの中で、ある時代を設定して、その時代に入手できる材料でものを造るという授業の話が出た。これは、専門の実験の単位ともなるようで、興味深い取り組みである。

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Rensselaer Polytechnic Institute

Dept of Science and Technology Studies; School of Humanities & Social Sciences

URL:
http://www.rpi.edu/dept/sts/
 工学系大学の中のSTS学部。STSの学部としては米国でも最も古い伝統を持ち、有力校の一つ。学部レベルのmajorの学生が多く、大学院も有力。デザインや実験、制作など、工学系と融合し非常に学際的、また市の問題と取り組み、現実指向。他大学が人文社会系を中心とするのと対照的である。修士レベルでは、行政機関でのボランティアなどインターンシップも。環境問題などに熱心。
 Rensselaer Polytechnic Instituteは、MITよりも早く、1824年に設立された私立の工学系大学。米国の鉄道建設、橋梁建設等の技術者を輩出した。明治初期には日本からの留学生も多く、日本の鉄道建設に貢献した(記録が図書館に残されている)。
Dept. of Science and Technology Studiesは、1982年に設立されたもので、departmentとしてはもっとも古い。大学院については、Graduate Programs in STS(修士と博士の両方あり)がある。PhDコースは1990年頃に開始した。
 昨年度から、同じSchool of Humanities & Social SciencesのDepartment of Economicsと共同で、Ecological Economics, Values and Policy Program (EEVP) を学際プログラムとして開設している。これには学部とProfessional Masters' Programがある。大学院は社会人、part-time学生もいる。さらに、Product Design and Innovation (PDI)が、Schools of Engineering、School of Architectureと共同でMechanical Engineeringまたは工学一般または建築とSTSのダブル・メジャーを取得できる学部の学際プログラムを開設している。これは、社会的観点を取り入れた設計ができる人材の養成を目指したものである。
 STSの初代のchairは教育学の女性で、学内で人望のある人だった。また、哲学者のJohn A. SchumacherがSTSに非常に熱心だった。彼は1988年からUndergraduate Program Directorをつとめ、98年からdepartment chair。最近死去。
 現在、スタッフはテニュアが12人、パートタイムが3、4名。このほか秘書3、4名程度。学部のmajor学生は60人くらい、minor学生は100人くらい。major学生の場合、pre-lowが多い。pre-medは10人くらい。minor学生の場合、pre-medが10人くらい。実技を伴う授業があることが特色。
STSの大学院生は修士、博士の両方で12人受け入れ。在籍者は46人、うち博士が30人。いままでに16人のPhDを輩出している。就職はいい。修士から博士の進学は50%程度。修士では修士論文またはインターンシップ(政府機関などで一学期)をやることになっている。
 Departmentの予算は1.5M$あるが、ほとんどがサラリーに充当される。20万ドルが大学院生のための奨学金(STS向けの寄付が少ないため、奨学金が少ない)。NSFのgrantが3件あり、これは院生3人のaidに回っている。テーマはproduct design and innovation、STS focus on design、green chemistry。この他、Grace財団からCampus Cleaning Projectのgrantあり。これらは合計(?)で30万ドル程度の規模。
学部の特色として、もともと、valueに重点があったことが挙げられる。そこから、political activismの方向に向かった。学部全体としては、デザイン、バイオ、情報などのemerging technologyの倫理、あるいはGreen City Projectなどに関心がある。
学部であることはメリットである。問題として、endowmentが少ないことがある。私立工学系大学なので、外部収入、寄付がないと厳しいが、STSは寄付が集まりにくい。EEVPを創設したのは資金確保の意味もある。大きな困難として、新しいdeanが経済学者でSTSに理解がなく、有力な研究者が他の大学に移ってしまったことは重大。幸い新学長の理解があり、再建の過程にある。
 Engineeringとの協力に特色があり、環境にいいおもちゃを造ったりという授業がある(実技の実習室を見学)。倫理教育(技術者倫理、医療倫理、情報倫理など)はSTS学部が提供している。ケーススタディ中心に実施している。

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