STSを学べる大学(イギリス)

[HOME]

イギリスでの主要大学

※このUCLの紹介はニューズレター第43号の服部恭子氏の記事に基づいて作成しました。

[戻る]

University College London (UCL)

Department of Science and Technology Studies

URL:
http://www.ucl.ac.uk/sts/
 University College London (UCL)は、オックスフォード、ケンブリッジ両大学に次いでイングランドで三番目に古い大学で、現在はロンドン大学の1カレッジである。ここにあるDepartment of Science and Technology Studiesは、undergraduate レベルの本格的なSTS教育を英国で最初に始めた学部である。今回は、「まなぶSTS」というテーマのもと、このUCLにおけるSTSの学部教育について紹介させて頂く。
 1924年にDepartment of History and Methods of Science として研究と大学院教育のために設立されたこの学部は、当初化学史に強かったらしい。その後、長年にわたりDepartment of History, Philosophy and Social Studies of Science と呼ばれていたが、次第に扱うトピックが多様になり、その教育内容を正確に表すため1996年にDepartment of Science and Technology Studies と改称された。多少前後するが、1993年に学部教育.もスタート。本格的なSTS教育を展開することとなった。以来、学部生の割合が圧倒的に大きいピラミッド型の構成になっている。とはいえ規模はやはり小さく、毎年25人程入学し、卒業するのは18人前後である。そのまま修士へ進学するのはせいぜい2−3人といったところであろう。
 ただし、この小ささが、仲のよい暖かい空気を創り出している事は記しておくべきだろう。事実、この学部に関わった全ての人々が、印象としてそのアットホームな親しさや楽しさを挙げている。スタッフ・学部生・院生の区別なく(時には他学部生等も交えて)、事あるごとにパブに集まり語り合える雰囲気が出来上がっていることが、強い信頼関係となりプログラムをこなしていく励みとなっているのだ。
 学部教育をスタートするに当たってのスタッフの苦労は並々ならないものであったらしい。主として、「きちんと科学の高等教育を受けないうちからこの分野を学ぶ必要はない」とする上層部の保守的な反対が強かったためである。これに対し、「科学教育を介さずとも学部教育とするだけの専門性のある分野であり、専門家の育成が必要である」ことを訴え、ようやく容認されたらしい。その代わり「本来は修士の内容なのだから」と、比較的厳しいプログラム構成となった。期限をすぎた提出物への減点がかなり厳しい事や、最終的な学位のランクの計算に一年次の成績も組み込まれている事などはその一例である。
 STS学部は、MAPS (Faculty of Mathematical and Physical Studies) に属していて、3つのプログラム(BSc. History and Philosophy of Science, BSc. History, Philosophy and Social Studies of Science, BSc. Science Communication and Policy)を持つ。コースはA(科学史・科学哲学中心)とB(PUS、メディア論、科学政策、科学社会学等)の2グループに分かれていて、選択するプログラムによってAとBの比重が違う。基本的に各コースは2000ワード程度のエッセイ2本と試験により採点され、一年間で8コース終わらせることになっている。最近ではBSc. History and Philosophy of Physicsという、物理・天文学部との合同プログラムも行っていて、これは物理学と物理史・科学哲学を同時進行させるかなり堅実なコースになっているようである。
 通常、プログラムとは入学の時点で決まっているものだが、STS学部は違う。一年目に必修科目(科学史・科学哲学・科学政策・PUS・近代物理史・近代生物学史)で様々な分野に触れ、じっくりと考慮した後プログラムを決め、二年目からは主に担当教官と相談しながら、それに合った科目を選択する。卒論の大まかな方向性もその際に話し合いアドバイスを受けるのだが、そのサポートぶりは家庭的、と言える程懇切丁寧なものであることが多い。
 コースの内容は、実践重視で楽しいものが多く、ロンドン中心部に位置する事も学部教育の中で充分活かされている。例えば、PUSのコースではRoyal Institutionに訪問する授業がある他、Wellcome Instituteでの医学史の特別展示へも足を運ぶ。ここのInformation Centreには、STSの文献やデータベースが豊富にあるので、コースワークのために頻繁に利用される。大衆文化の中の科学を扱うコースでは、チャンネル5のディベート番組に参加する機会もあった。また、近代生物学史でオリジナル文献を読み分析するエッセイがあるが、これはBritish Library で文献を探す方法を学び実践する目的も含んでいる。このような授業には、最終的に卒論でフィールド・ワークを行えるようにという意図も含まれているようだ。反対に、STS学部側からSpeakerユs Seriesというオープンセミナーを通して、広くロンドンに発信する積極性も持っている。
 最後に大学院についてほんの少し触れておくと、UCLはLSE (London School of Economics)やImperial College(共にロンドン大学のカレッジ)との繋がりが強い。中でもLondon Centre for the History of Science, Medicine and Technologyという、UCL・Imperial College・Wellcome Trust Centre for the History of Medicineの3校合同の組織による修士プログラムはロンドン大学ならではのものである。
 常に楽しく暖かいST S学部の様子は、学部のサイトhttp://www.ucl.ac.uk/sts/にも反映されている。是非一度覗いてみて頂きたく思う。

top

[HOME]


Copyright (C) 2001 STS Network Japan
All rights reserved
For More Information Contact office@stsnj.org