University of Hawaiiは,アメリカ・ハワイ州にある州立の総合大学で,3つのキャンパスと7つのコミュニティカレッジで
構成されている.そのうちUniversity of Hawaii at Manoa(UHM)は,undergraduate,graduateそしてlawとmedicineの
professional degreesプログラムをそなえたresearch universityである.UHMは,ハワイ諸島の中で3番目に大きな島である
オアフ島にあり,ハワイ州の政治経済の中枢であるとともに,観光の中心でもあるホノルル市にある.どの専攻もハワイ州の地
域特性を生かして,アジア太平洋地域に焦点を定めた研究を展開しており,とりわけ第二言語学,海洋学,天文学では全米でも
最高水準の研究実績を誇っている.本エッセイでは,現在,私が在籍している社会学研究科について紹介させていただく.
社会学研究科は,college of social sciencesに属していて,undergraduateプログラムとgraduateプログラムがある.
Graduateプログラムには,M.A.プログラムとPh.D.プログラムがある.M.A.プログラムには,ターミナルM.A.プログラムと社会
学のM.A.とpopulation studies certificateを同時に取得するpopulation studies専修プログラムがある.ターミナルM.A.プログ
ラムは,Ph.D.プログラムに進学することを前提とせず,M.A.の取得をもってプログラムが完結する.学術,行政,民間セクター
で研究職に就ける水準の知識と研究手法の習得を目的としている.その一方で,population studies専修M.A.プログラムは,社
会学とあわせてpopulation studiesを学び,ターミナルM.A.を取得した学生と同様に,学術,行政,民間セクターで求められる
水準の知識と研究能力を習得することに加えて,コミュニティカレッジでpopulation studiesが教授できる水準の知識と研究手
法の習得を目的としている.
研究科の特色として,(1)sociology of Asia and the Pacific(2)Ethnic and race relations(3)Crime, law and deviance(4)Health, aging and medical sociologyを専門分野とする教授陣が充実していることが挙げられる.先述した ように,UHMのgraduateプログラムは,ハワイのおかれた政治的社会的文化的歴史的な布置を生かした研究をすることを missionのひとつとして掲げているが,社会学研究科においても,アジア太平洋地域に焦点を定めた研究の進展がmissionのひ とつとなっている.社会学研究科は,アジア太平洋地域のなかでも東アジアを対象とした研究を専門とする教授陣が充実してい て,各国間および各地域間の比較研究をはじめ,当該諸国および当該地域の文化を背景としてもつ人々の研究がなされている. こうした研究は,研究科の専門エリアのひとつである医療社会学においても実践され,研究が蓄積されている.たとえば,個人 的問題や精神的問題に対する青年層のhelp seekingがethnic backgroundsによってどのように異なってくるのかについての比 較研究などが例として挙げられる.エスニシティについては,1960年代以降,エスニシティの概念化それ自体の内部において, さまざまな議論が交わされてきたが,社会学研究科においては,ハワイやハワイで生きてきた/いる個人や集団のおかれた政治 的社会的文化的歴史的布置から生成されたパースペクティブのもとで,独自の研究が積極的に展開されている.STSに関心を 持っている方々にとっても,非常に興味深いパースペクティブを示唆し得る研究がなされているといえる.
社会学研究科で展開されている研究の動向については,研究科のサイトhttp://www.sociology.hawaii.edu/に詳しい.是非
一度アクセスしてみていただきたく思う.