「食と農の未来と遺伝子組換え農作物」市民会議にパネリ ストとして参加して

青山 慶子(筑波大学大学院 生命環境科学研究科 国際地縁技術開発科学専攻)




 すべての生物が遺伝子という情報源を持っています。どれぐ らいの人が、遺伝子とDNAが違うものであるということ、遺伝 子組換え技術と従来の育種方法(交雑育種・系統育種)が違うと いうことを知っているのでしょうか。私は、生命の不思議を遺伝 子から知りたく大学、そして大学院へと進学しました。大学では 生物について勉強してきましたが、遺伝子組換え農植物の作出方 法や今現在どのような研究がなされてるのかに重点がおかれた授 業が主でした。大学院ではそれに研究についての専門性が追加さ れた講義を履修しました。卒業研究として、観賞花であるベゴニ アに、その品種が本来持つことのない青色の色素をもたせるため の遺伝子組換え植物の作出研究や紅葉のしくみを微生物の活性か ら研究していました。現在は、世界の人口増加にともない起こり うる食糧不足を回避するために、育種困難な地域でも栽培できる ようなイネを目指して、乾燥耐性についての研究を浸透圧調節機 能から研究しています。

私は、「食と農の未来と遺伝子組換え農作物」市民会議に参加 することができました。しかし、恥ずかしながら、このような市 民会議が開催されていることを初めて知りました。今回、この会 議が開催されるのを知ったのはたまたま見つけた農林水産先端技 術産業振興センターのホームページからでした。市民会議がどの ようなものであるのかはもちろん知りませんでした。しかし、い ままで遺伝子について勉強し、そして遺伝子組換え植物の作出を したことがあるという経験から、研究者としてこの研究に携わる ためになにを考える必要があるのか、また、今後消費者との情報 交換になにが大切なのか、そしてどこにギャップがあるのかを自 分なりに知りたく今回参加することにしました。

この会議で私は、技術面からの未来予測とその課題・提案につ いて考えました。特に、開発のためのガイドラインに関しては、 かなり目新しいものではないかと考えています。それは、今まで の市民会議での要望書では、消費者サイドからの安全性について 議論していた部分があるからです。また、組換え農作物を材料と して使用しているかを見極めるためにも、検出技術の重要性やそ してその流通過程においての改善点にも注目しました。これら は、−市民会議−「食と農の未来と遺伝子組換え農作物」の「課 題と提案」で公開されているので、見ていただけるとわかると思 います。

今回この市民会議に出席しとても感じたことがあります。それ は、この会議の開催を知っている人と知らない人の知識および関 心度にかなりの差があることです。この遺伝仕組換え研究を主に 行っている人でも、知っている人は皆無に等しかったような気が します。それは、個人の問題でもありますが、その技術をとりま く社会環境を知っていない、そして大学等で教えていないことも 原因のひとつではないかと感じました。また、この遺伝子組換え 農作物の安全性のみ取り出されていることに疑問を思いました。 どのような情報のみで安全性を決めているのでしょうか。口に入 るものなので消費者心理として、安全なものをえらんでしまうこ とは、よくわかります。しかし、この問題だけが遺伝子組換え農作物をとりまいているわけではありません。流通や特許、種子独 占、遺伝子汚染、環境問題、従来農法の衰退などいろいろな問題 があるはずです。それが、すべて安全性だけではかたづけられな い問題なのです。また、市民会議の話題があまり伝達されていな いことにびっくりしました。4日間という短い時間ですが、私た ちはこの会議に参加し、そして意見を交換し議論してきました。 この要望書が多くの人々の理解を得て、見ることを考えながら。 しかし、この要望書はホームページで公開されているだけで、あ まりマスコミ等の情報源にはならなかったようです。

この市民会議に参加し様々なことを考えました。このような機 会を与えられとてもうれしく思います。私は、この市民会議が多 くの人々に知られ、そして情報源となれたらいいなと考えていま す。今のままでは、この市民会議の開催の意義が薄くなってしま うような気がします。まだまだ、いろいろと考える部分があると 思います。この市民会議が今この遺伝子組換え技術の研究をして いる人にとっても、消費者にとっても有意義のあるものであるよ うにしていく必要があるのではないでしょうか。そのためにも、私たちが議論を積み重ねたこの市民会議が多くの人々に知られる ことを切実に望みます。そのことによって、初めて遺伝子組換え 技術の意義も問われるのではないでしょうか。最後に、この技術 が多くの人々のために活用されるものであってほしいと思いま す。




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