工学教育国際会議参加報告:

工学へのSTSからのアプローチを目指して

杉原桂太(名古屋大学大学院)




 2002年8月18日から21日にかけて英国・マンチェスター科学技術大で開かれた工学教育国際会議(International Conference on Engineering Education(ICEE))に参加し、「如何にして日本で技術者倫理教育を始めるか―新参者の視点から(How to Start Engineering Ethics Education in Japan: From A New Comer's Point of View)」というタイトルで口頭発表を行った。本報告では、今回のICEEで発表された各国の工学教育者の発表をもとに、工学教育と、STS(Science and Technology Studies)や技術者倫理を含む人文・社会科学系分野との関係について論じたい(必要に応じて、今回のICEEへの発表論文が収録されたInternational Conference on Engineering Education 2002 Manchester, CD-ROM, University of Manchester Institute of Science and Technology, August 2002を参照する)。日本の工学へのSTS的な視点の必要性についても取り上げる。

 ICEEは、工学教育のグローバル化を背景に、工学教育者の情報交換を目的に1994年に設立された。現在では、2000年に組織された国際工学教育・研究ネットワークiNEER(International Network for Engineering Education and Research)がスポンサーになっている(Web Page は以下の通り http://www.ineer.org/Welcome.htm)。今回は、世界48カ国から提出されたアブストラクトから、347件の口頭発表と61件のポスター発表が受理された。発表では、実践している具体的な教育手段を各国の工学部の教官が紹介するという内容が多かった。

 さて、工学教育とSTSや技術者倫理との関係についてICEEを通して考える前に理解しておく必要があるのが、Engineeringと日本のいわゆる工学とは別物ということである。工学は、技術についての科学あるいは学問として定義されることが多い。一方、Engineeringとは技術業とでもいうべき専門職業なのである。例えば、Engineeringが専門職業として捉えられている傾向は、今回のICEEで設けられたEngineeringに対する認識(perception)についてのセッションでもうかがわれた。このセッションでは、「技術業―創造的な専門職か?(Engineering: A Creative Profession?)」というタイトルで南オーストラリア大学の教官が学生に対するアンケート調査結果を発表した。このアンケートは、会計職(Accountancy)や医業(medical practice)、建築(architecture)、音楽(music)と比べてEngineeringがどのくらい創造性(creativity)を持っていると思っているかについて尋ねている。アンケートをもとにEngineeringの持つ創造性に注目したカリキュラムを構築し学生を動機づけようというのがこの発表の狙いであった。同セッションで他にも、メルボルン大学の教官が、「化学技術業専門職についての認識―国際調査結果(Perception of Chemical Engineering Profession−Results of An International Survey)」という発表で、化学技術者がどのくらい尊敬されているかについて複数の国の工学部生に尋ねたアンケートが紹介された。このように用いられているEngineeringは、工学と訳すよりもむしろ技術業と捉えるべきだろう。

 むろん、現在では、Engineeringの構成要素のうちに科学がしめる割合が大きい。じっさいに、ICEEのセッション「国際教育と認定(International Education & Accreditation)」では、「変わり行く専門職における認定と質的評価(Accreditation and Quality Assessment in a changing Profession)」というタイトルでポルトガルのコインブラ大学の教授が、Engineering はScienceとDesign、Business、Doing(サービスや仕事を指す)からなると指摘した上で、同大学の教育で科学が占める比重が高いことに言及した。しかし、この教授がScienceなしのEngineeringが成立した時代があったという趣旨のことを述べていたように、技術についての科学としての工学とEngineeringとはまずは区別して考える必要があるだろう。

 以上のように、Engineeringと工学の差異を押さえた上で、STSや技術者倫理をはじめ人文・社会科学系分野と工学教育との繋がりを今回のICEEを通じて探ってみよう。両分野の繋がりは、米国工学技術認定委員会(Accreditation Broad for Engineering and Technology (ABET))や日本技術者教育認定機構(Japan Accreditation Broad for Engineering Education(JABEE))の枠組み内の関連と、直接的には認定に関わらないは範囲における関係とに分けることができる。いずれの枠組みにおける繋がりも、背景にはEngineeringの専門職としての側面がある。

 はじめに、認定機関に関わる方から紹介する。ABETが挙げる基準のうち、人文・社会科学系分野につながる基準は、「技術業倫理(Engineering Ethics)」(本報告ではEngineering Ethicsをこう訳す)と「技術業と公共政策(Engineering and Public Policy)」である。今回のICEEでは、ABETの他の基準「デザイン能力(Design Ability)」の枠組みにおいて「技術業倫理」や「技術業と公共政策」を教授する方法の紹介が多く見られた。具体例を紹介する前に、デザイン能力がEngineeringの専門職としての側面に関わる能力だということに触れておく必要がある。デザイン能力においては、「顧客(Customers)」が重要視される。一方、科学を志向する工学の「設計」では顧客という言葉はあまり登場しない。

 一例として、セイントルイス大学の電気工学科を取り上げる。「電気工学課程における設計体験―統合的アプローチ(Design Experience in Electrical Engineering Curriculum: An Integrated Approach)」と題して同大学教官は、四年間を通じてデザイン能力を育成するカリキュラムを紹介した。このような教授法は、Across the curriculaと呼ばれる。「技術業倫理」と「技術業と公共政策」は、次のようにデザイン能力のためのカリキュラムの一環として取り上げられる。二年生の春学期には、「電磁場(Electromagnetic Fields)」コースなどと並んで「倫理(Ethics)」コースが用意されている。四年生の電気工学設計1(Electrical Engineering DesignT)コースでは、デザイン上の配慮(Design Considerations)のトピックス中で、設計方法論(Design Methodology)やCAD(Computer Aided Designs)などと並んで倫理事例研究(Ethical Case Studies)が提示されている。この事例研究は「技術業倫理」に対応する。さらに同コースの技術業設計の諸相(Aspects of Engineering Design)のトピックスでは、Engineeringの社会的・経済的・倫理的・政治的・法的側面と、環境・安全といった話題が示されている。これらは、「技術業と公共政策」に相当する。同大学の取り組みから、「技術業倫理」や「技術業と公共政策」などの倫理やSTS分野が、ABETの基準に取り上げられたことによって工学教育で取り上げられていることが分かる。

 報告者の口頭発表も、認定機関に関わるものだった。1999年に設立されたJABEEが認定基準に「技術者倫理」をとりあげたことによって日本の理工系高等教育機関においても技術者の倫理の教育が必要になってきたことを背景に、名古屋大学・名古屋工業大学の哲学・倫理学研究者と工学研究者によって2000年に名古屋工学倫理研究会(Nagoya Engineering Ethics Forum[NEEF])が設立された(研究会のWeb Page:http://www.info.human.nagoya-u.ac.jp/lab/phil/neef/)。基礎工学部卒業後に名古屋大学人間情報学研究科で科学哲学を学んでいる報告者も院生として参加した。発表では、NEEFの活動から明らかになっていた日本における技術者倫理教育の克服すべき二つの問題点と、問題点への解決策を探るために2001年10月に行われた「工学倫理公開シンポジウム「工学倫理と企業倫理−組織の中の技術者―」」(主催:名古屋工業大学 共通講座教室・言語文化講座 共催:名古屋工学倫理研究会 後援:科学技術社会論学会(STS学会))を紹介した。日本で技術者倫理教育を進める上での問題点は、米国の技術業倫理との対比で明らかになる。米国における技術業倫理は、技術業の専門職業倫理である。すなわち、技術業倫理は、専門職としての技術者と社会との社会契約を根拠に、所属する企業への忠誠以上に公衆の安全の配慮に重きをおくように技術者に要請する。同時に、科学技術が社会に及ぼす倫理的影響を扱う研究とは別の分野であり、特に近年は個々人の技術者の対処しうる範囲において倫理問題を扱っている。このような米国の技術業倫理が国内でも紹介されているが、日本の技術者倫理に応用するには二つの問題点がある。第一に、日本の技術者の立場が、米国の独立した技術者ほど専門職として確立していないことである。例えば、公衆の安全のための内部告発を強力に求める米国の技術業倫理を直接日本の技術者にあてはめることは、技術者に重過ぎる責任を課すことになる。第二に、米国の技術業倫理は専門職倫理に特化し、科学技術の社会への倫理的影響は直接的には扱わない傾向にあるが、日本では科学技術の倫理を含めて技術者倫理が論じられていることである(ICEEで米国の工学教育関係者に確認したところ、ABETの基準「技術業と公共政策」は産業プロジェクトが経済や環境に与える影響について扱う分野である。したがって、ABETの認定基準にはいわゆる科学技術の倫理は含まれていないように思われる)。つまり、日本の技術者倫理教育では、米国で用いられている技術業倫理の教科書の翻訳を用いるだけでは十分でない。シンポジウムで得られた各々の問題に対する解決策は以下の通りである。第一の問題に対する解決策は、技術者倫理と企業倫理とを接合することである。両分野を統合することによって、倫理問題に対する企業の集合的責任をまず問い、次にその集合的責任を技術者に配分することができる。ここでは、法的存在である企業に倫理的責任を課すことを如何に正当化しうるか、企業に課した倫理的責任をどのように技術者を含む従業員に分配すべきか、といった事柄が問題となる。第二の問題への解決策は、すでに用いられている工学教育の題材の中に科学技術が社会に及ぼす影響についての教育に使用可能なものがあるということである。例えば、名古屋工業大学大学院の都市循環システム工学専攻では、とくにJABEE対策という訳ではなく以前から、Sol Power The Evolution of Splar Architecture (Sophia and Stefan Behling in collaboration with Bruno schndler, Prestel Munich 1996)が用いられている。一章を環境倫理に充てているこの著作は、工学と社会との関係を論じるのに用いることができる。報告者は、STSは第二の問題への解決策となりうると考えているが、日本の技術者倫理の研究・教育は揺籃期にあるため、ICEEでは利用可能な工学教育の教材を紹介した。

 工学教育の認定機関との関連においてのみSTSをはじめ人文・社会科学系分野と工学教育との繋がりが今回のICEEで論じられていたわけではない。工学部が認定基準とは独立にSTSを含む人文・社会科学系分野の必要性を認めたり取り入れたりしている次のような例が口頭発表された。米国のタスキーギ大学・航空宇宙工学科の研究者は、「グローバル化時代における工学教育の社会的側面(The Social Dimension of Engineering Education in the Globalization Age)」というタイトルで、グローバル経済化においてはEngineeringの技術的側面だけでなく社会的側面についてのスキルが技術者に求められると指摘し、新たなカリキュラムの構築を提案した。グローバル化は、南北格差や環境汚染、自然資源の枯渇をもたらしてきた。Engineeringにはこれらの問題を理解し解決する役割があり、これまで扱われてこなかったEngineeringの社会的側面を重視した教育が必要であるというのがこの発表の趣旨である。

 米国・レンセラー工科大学からは、STSを取り入れた設計教育が、「生産デザインとイノベーション―社会科学とデザイン、エンジニアリングを組み合わせた新カリキュラム(Product Design and Innovation: A New Curriculum Combining the Social Sciences, Design, and Engineering)」と題して紹介された。PDI (Product Design and Innovation)プログラムは、斬新的なデザイナー(Designer)の養成を目指しており、工学部と人文・社会科学学部との協同で開講される。各セメスターで開講されるStudioと呼ばれる科目がPDFを構成している(PDIのカリキュラムなどは以下のWeb Pageに掲載されている。http://www.rpi.edu/dept/sts/pdi/index.html)。各Studioで学生は、基礎工学(Engineering Science)とSTSの双方のカリキュラムを学ぶ。基礎工学カリキュラムは機械工学(Engineering Mechanics)と 電子工学(Electronics)、エネルギー(Energy)、材料(Materials)、生産(Manufacturing)からなっており、STSカリキュラムはPDIの社会的・文化的側面、成功と失敗の事例研究から構成されている。STSを特に用いた教育は、Studio1からStudio3までに見られる。Studio1は、工学部と建築学部、人文・社会科学学部のSTS学科の教官(Jeff HanniganおよびDavid Hess)によって教授され、電話機を一連の設計課題(design exercises)の一つとして、エスノグラフィーが取り上げられる。創造的な設計のための個々人の設計スキルに注目するStudio2においても、設計開発(design development)スキルの一つにエスノグラフィックな方法論が数えられている。Studio3では、エスノグラフィックなデータ収集の手法とIT(Information Technology)設計とが統合的に扱われている。このエスノグラフィック方法論には、参与観察、技術の社会的側面調査、参加型設計(participatory design)、設計プロセスや完成品による社会へのインパクトを明らかにする他の人類学的な視点が含まれる。一方、ここでのITは、ハードウェアとソフトウェア、新たなコミュニケーション形態(インターネットやイントラネット)から人‐機械のインターフェイスからなっている。学生に、エスノグラフィーとITの統合について考えさせることによって、生産設計と生活経験の知識との相互のコラボレーションを探求させることが狙われている。具体的にはStudio3は、教育技術(educational technologies)の設計にもとづいている。学生にエスノグラフィー技術を学ぶ場として与えられたのは、マイノリティーの子供が90パーセント以上を占めているある小学校である。小学生と一対一の組になり、学生は、次のような3段階のエスノグラフィーの経験をつむ。「参与観察」では、小学生の学習や遊びの様子などについてフィールドノートを取りその観察について小学校の教師と面接を行う。「設計調査」においては、小学生からなんらかの反応が返ってくるような設計を行うことが要求される。ここでは、学生のはじめの予測はたいてい外れていて新たな方向性が着想されるため、エスノグラフィーの価値が明らかになる。ある学生が設計した重りのボールは、一度テレビゲームになり、さらに光のパターンを音に変換する"センサー グローブ"となった。「使用者反応」では、完成した試作品がじっさいに小学校に持ち込まれ、安全配慮や学習上の必要性などにもとづいた小学校の教師からのフィードバックなどにもとづいて評価が行われる。レンセラー工科大学は、PDIプログラムを受講した学生の評価を行っている。PDIを受講した学生は、受講していない学生に比べて、創造性に富むと同時に、年齢や健康、心理的要素などの社会的側面によく気づくようになっているという調査結果が報告された。さらに同大学は、外部からパネルを招き、工学教育の認定モデルにもとづいてPDIプログラムの評価も行っている(この点において、報告者は、PDIプログラムは今後ABETの認定と関係を持つという可能性もあると考える)。パネルは、報告の一部で、PDIプログラムのSTS学科の大学院コースへの拡充を挙げている。ここではSTSの修士プログラムが、需要発見(need finding)と設計試験(design testing)の専門家を産業界に提供できうることが示唆されている。

 以上、ICEEで行われた発表に基づいて、工学教育で取り上げられているSTSをはじめ人文・社会科学系分野が取り上げられている様子を紹介した。以下、工学教育とSTSを含む人文・社会科学系分野を結びつける上で必要となるであろう事柄を指摘したい。今回のICEEでも明らかになったように、STSや倫理を含む人文・社会科学系分野は世界の工学教育で盛んに取り上げられ始めている。両分野を結んでいるキーワードは、Engineeringの専門職としての側面を意味する技術業である。「技術業倫理」は、技術業の専門職化を進めるために19世紀後半以来米国の技術者が顧客や公衆に示してきた社会契約としての側面を持っている。「デザイン能力」は、技術業にとっての顧客を想定した設計を重要視する。これまで日本の工学では、Engineeringの科学としての側面のみが取り上げられ、専門職の側面はあまり取り上げられてこなかったように思われる。工学教育の認定制度などを通して、今後日本でも工学教育とSTSを含む人文・社会科学系分野は統合的に扱われていくだろう。このような時期にあたり、日本のSTS論者をはじめ人文・社会科学研究者と工学教育者には、工学をめぐる言説であまり注目されてこなかったEngineeringの技術業的特徴に関心を払うことが求められるだろう。とくに人文・社会科学研究者には、工学を対象とするさいに、研究・教育の対象は科学そのものではなく技術業としてのEngineeringである点に注目することが求められるだろう。STSでは、科学・技術・社会の相互の関係が社会科学によって分析される。したがって、科学技術に特化してきたこれまでの工学は、STSが得意とする分析対象であったと思われる。しかし、今日では、工学教育においてEngineeringの科学的要素に加えて専門職的側面に関心が集まっている。今後は、工学に対してSTS的なアプローチを行うさいに専門職としての技術業に注目する必要があるだろう。一方、工学教育者には、Engineeringの専門職的な側面へ注目すると工学部の研究・教育の内容に相当の変更につながりうることを踏まえておく必要があるのではないだろうか。専門職としての技術者を養成する海外の工学部では、科学と設計のみに注目したこれまでの日本の工学教育の枠組みでは捉えきれないと思われる教育が行われている。たとえば、今回のICEEで米国・ロワン大学工学部から、題材としてヘア・ドライヤーや電動歯ブラシなどを題材とした一年生向けの設計教育が提示された。学生には、これらの身近な製品の設計を通して、製品の工学的性質の理解に加えて知的財産権や安全、倫理、作業姿勢、環境への配慮を学んでいる。日常的な製品には、社会との接点が用意されているということができる。一方、日本の工学部は、日用製品よりもむしろ、高度の科学的知識が必要になるようなX線による物質の構造解析などを教育の題材として取り上げてきたように思われる。今後日本の工学部において専門職としての技術者を育成するためには、最新の科学を必要としない製造物を取り入れていることが必要になるかもしれない。

 ここまで、ICEEで提示された発表をもとにして、工学教育とSTSを含む人文・社会科学系分野との関係について論じた。以下では報告者の任務を越えるお許しを頂きながら、日本の工学にたいするSTS的な分析の重要性を提示したい。日本では、全体として大学に占める工学部の割合が高い。日本における科学技術についての考察にとって、工学への視点は欠かせないであろう。今日、工学教育のグローバル化を受け、日本の工学部はSchool of Engineeringに変わろうとしている。工学という学問の内容も変化していくだろう。この時期に、工学とは一体なんであったのか、どのように変わるべきかについて議論が必要である。ここでは、科学史・科学技術社会学・科学哲学などの道具立てを動員した分析が有効であるように思われる。問うべきは以下のようなものではないだろうか。第一に、科学史からのアプローチである。明治期に世界に先駆けて日本は、Engineeringの研究・教育を行う工学部を総合大学の内部に取り入れた。しかし今日では、Engineeringと工学の内容は明らかに異なっている。現代史のいかなる経緯を経て工学は科学に特化していったのだろうか。第二には、科学技術社会学的なアプローチが必要である。なぜ工学は、「技術者(Engineer)」とは異なる「工学者」を輩出しながらEngineeringを離れて科学を志向してきたのだろうか。その答えは、工学部に支援を与えてきた日本の社会に求められるだろう。工学者共同体に、社会全体はどのような影響を与えていたのだろうか。第三に科学哲学的アプローチに注目したい。工学の知識は、Engineeringや科学の知識とも異なっている。ICEEの一件の発表にもとづけば、Engineeringは、ScienceとDesign、Business、Doingからなる。工学は、EngineeringからBusinessとDoingを削ぎ落とし、Designから顧客の概念を省いた設計と、科学から成り立っている。このような工学の知識は、科学的知識と対比してどのような認識論的な身分を持っているのだろうか。これらの問題は、重要かつ興味深い研究対象であると思われる。この紙面をお借りし、日本の工学部の将来を見据えた工学に対する科学史・科学技術社会学・科学哲学的な分析を呼びかけたい。最後に、ICEEでの発表に有益なコメントを寄せて頂いた名古屋工学倫理研究会のメンバーの方々と、STSNJ夏の学校2002の実行委員長で本報告の作成を勧めて下さった重松真由美さんに感謝したい。




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