NIRA-東京大学*共同国際ワークショップ

『新エネルギー開発と市民参加−風力を例として』

木場隆夫(総合研究開発機構)




 さる4月19日(金)、20日(土)に総合研究開発機構大会議室において、標記会議が行われた。
 趣旨は、風力などの新エネルギー技術開発を題材として、エネルギー・環境政策及び技術開発における市民参加の役割を論じるというものである。この背景として欧州で環境問題への意識の高まりから、風力発電が最近著しく進展をし、そして風力技術の開発には、市場だけではなく、また、政府だけでもなく、市民の参加が重要であったことがあげられる。
 本ワークショップは、外国からパネリストを招き、日本側からはNIRAスタッフ及び研究会委員がメインスピーカーとして参加した。一般参加者として大学、NGO、産業界、研究所、マスコミなど幅広い層の参加があった。NIRA外部からの参加者は、のべ約60名にのぼり、一般参加者を交え、自由な雰囲気で活発な議論を行った。外国のパネリストは、米国からミランダ・シュルーズ/メリーランド大学教授(環境・エネルギー政策)、オランダからリニー・バン・エスト/ラセノー研究所研究員(技術評価)、ドイツからアンドレアス・ワグナー/ヨーロッパ風力エネルギー協会副会長、イギリスからスティーブ・イアリー/ヨーク大学教授(環境社会学)であった。
 日米欧の政策形成の比較をしながら、風力と市民参加をめぐって、議論を行った世界でも初の会議であった。
エネルギー政策に関する市民参加、技術開発と市民の役割、欧州の風力発電と地域性、環境政策と技術開発と市民の役割という4つのセッションをもった後、共同コメントを発表した。

 議論の概要は、以下のようである。
 NIRAでは昨年6月より、風力発電を例として「新エネルギー開発と市民参加」について研究を行ってきた。我が国の新エネルギー政策の決定過程と技術評価のあり方について検討した。その結果、風力等の新エネルギー導入の目標設定は十分審議し尽くされたものではないという問題が明らかになった。多様な新エネルギー技術の評価も尽くされてはいなかった。さらに、地域における風力導入は、補助金と風車のシンボル的な価値が動機となっており、また、地域のイニシアティブも重要であった。
 エネルギー・環境問題は高度の専門知識を必要とするが、専門家と中央政府による意思決定では限界に来ている。欧州や米国では新エネルギーの導入・普及をめぐり、政策決定への幅広い市民参加を通じて、新しい政策メカニズムが成功してきた。そこで、今後のエネルギー・環境問題、とくに技術開発と普及をめぐる政策を考えていく上で、各国における市民参加の経験を共有し、相互に学ぶことが有益である。
 ワークショップの総括コメントは概要以下のようである。
(1)エネルギー・環境政策への市民参加は、政策そのものの改善、運用、実行の円滑化を促進するために重要。
(2)市民参加の方法は、状況によって多様な方法がありうる。市民への情報提供が重要。特に、技術開発段階における市民参加は重要。
(3)市民参加は、多元的で透明性の高い意思決定のために必要。
(4)日米欧の政治的および技術的状況は異なるので、他の経験を学び、日本型モデルを考えることが国際的にも有用。

*NIRAと東京大学大学院人文社会系社会学研究室が共催した。






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