代表挨拶

隠岐さや香
東京大学大学院博士課程 日本学術振興会特別研究員
 

 冷戦の終焉と共に、STS Network Japanは10年前に産声をあげました。来るべき時代を見据えることを主眼に起き、堅苦しい「学術団体」ではなく、多様な人々から成る緩やかなネットワークの「場」として機能することをめざして、数々のシンポジウムや夏の学校などの催しを行い、リアルタイムで社会と科学を追いかけてきました。
 1990年代はソ連の解体に始まり、アメリカンスタンダードという名の下カジノ経済が猛威を振るう中、国家、社会、家族などにおいて「普遍的」とみなされてきた近代的諸価値が動揺し、総点検を迫られた時代でした。特に、科学と社会の切り結ぶ地点に立つSTSNJは、冷戦型科学の民生転換に伴う光と影、バイオテクノロジーがもたらす倫理的問題、深刻化する環境問題など、ますます複雑さを増す現実が我々の前に累積していくのを目の当たりにしてきました。
 そして、迫り来る21世紀、STSNJは何処へ向かうのでしょう。「誰が、誰のために、何を発信するのか」ということを真剣に考えるべき地点に来ています。結成から10年のうちに、STSに対する社会の認知度は高まり、STSNJ も幅広い世代と多様な背景から成る会員の方々をお迎えするようになりました。この現状を受けて、関心を共有する研究団体との協力関係の模索などが提案されています。
 これからの一年は社会と科学の望ましい姿、STSNJ自身のこれからのあり方、その両方について議論し、未来を構築するための大事な助走のステップとなるでしょう。そのために私も、STSNJの事務裏方として若手や先輩方と連携しつつ、皆様の積極的なご参加と、幅広い交流・対話とを可能にする場の提供を心がけていく所存です。また、今後ともより一層効率的で透明性の高い運営を目指すため、調整機関である事務局を制度的に整備されたものにするお手伝いが出来ればと考えております。
 いずれにせよ、常に皆様との対話・交流を第一に頑張っていきたいと思いますので、まだまだ至らぬ事の多い未熟者ではありますが、一年間、どうぞよろしくお願いいたします。


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